韓国特許庁は、知的財産権(知財権)基盤が弱い個人、中小企業の過ちを積極的に救済し、権利獲得の機会を最大限保障するための特許法・商標法・デザイン保護法の一部改正案(ソン・ガブソク議員の代表発議)が9月29日(水曜)に国会本会議を通過(*)したと発表した。
*10月中に改正法律案を公布する予定→公布後6ヵ月が経過した日から施行
まず、拒絶査定不服審判の請求期間を現行の30日から3ヵ月に伸ばすことで、審判に対する十分な準備期間を提供(*)し、不必要な期間の延長(**)を最小限に抑えることができるようになる。
*主要国における特許拒絶査定不服審判の請求期間:米国‧日本‧中国は3ヵ月、韓国は30日
**特許拒絶査定不服審判における期間延長の割合(2020年):32.1%(643件/2,001件)、期間延長費用:1回2万ウォン(5回以上24万ウォン)
また、書類の提出、手数料の納付などの期間が経過して権利が消滅した場合、権利回復の要件を「責任を負うことができない事由」から「正当な事由」に緩和した。例えば、新型コロナウイルスにより突然入院して手続きを進められなかった場合などは、これから救済することができるようになる。
これに加えて、先出願に優先権主張があれば、先出願に対する分割出願を行う際も優先権を自動的に認めることで、優先権主張の欠落(*)などの過ちにより出願が拒絶されることを防止できるようになる。
*分割出願の際に優先権主張が欠落した特許出願は、年平均137件(2016~2020年平均)。
現在は、拒絶査定不服審判が行われると、登録可能な請求項が一部あっても、特許全体が拒絶されるため、特許を受けることができなかった。しかし、改正案では、審判で拒絶決定が維持(棄却審決)されても登録可能な請求項のみ区分して出願する分離出願制度を新たに導入することで、出願人の権利獲得の機会を拡大した。
また、特許査定の後も、市場の状況に合わせて発明が改良された場合、改良発明を追加することで国内優先権主張の出願が可能になる。
登録査定された商標・デザイン登録出願が設定登録される前に審査官が明らかな拒絶理由を発見した場合、登録査定を取り消し、職権で再審査できるようして無効事由がある不良権利の発生を事前に遮断することで、紛争の余地を事前に防止することができる。
また、デザイン登録拒絶査定に対応して「再審査請求時」に補正書を提出しなければならなかったが、それが「再審査請求期間内」に拡大される。
[出所:特許庁]
<特許法・商標法・デザイン保護法一部改正案の概要>
1.出願人の権利回復要件の緩和
・手続きの無効処分取消および商標権の回復要件を「責任を負うことができない事由」から「正当な事由」に緩和して権利救済
*例)正当な理由:持病による入院、手数料口座振替のエラーなど
2.分割出願における優先権主張の自動認定制度の導入(特許・商標・デザイン共通)
・先出願に優先権主張があれば、先出願における分割出願の際にも自動認定することで、優先権主張の欠落による拒絶を防止
3.拒絶査定などに対する審判請求期間(再審査請求期間)の延長(30日→3ヵ月)など(特許・商標・デザイン共通)
・期間延長:十分な準備期間を提供、及び不必要な期間の延長を最小化
・特許における再審査請求対象の拡大:登録査定の後も明細書などを修正して、再審査請求が可能
4.権利移転に伴う共有者の通常実施(使用)権を保護(特許・商標・デザイン共通)
・共有者の特許権などを分割請求(競売)した場合、持分を喪失した残りの共有者に通常実施(使用)権を付与して継続中の事業を保護
・質権設定前の商標を使用している場合、競売などにより商標権が移転しても商標権者に通常使用権を付与(特許、デザイン法では既に導入)
5.分離出願制度の導入(特許)
・拒絶査定不服審判の棄却審決(拒絶査定を維持)を受けた後も、出願で拒絶されなかった請求項のみを分離して出願することができる制度の導入
6.特許法上の国内優先権主張ができる出願対象を拡大(特許)
・登録査定の後も、該特許出願を改良・追加した発明を優先権主張により新たに出願し、特許を受けることができるように対象拡大
7.商標登録査定以降の職権再審査(商標・デザイン)
・登録料納付までに明らかな拒絶理由を発見した場合、職権により再度審査(特許法には既に導入)
8.再審査請求時における補正機会の拡大(デザイン)
・補正機会の拡大:再審査請求による出願の補正は、再審査請求期間までに拡大
9.法人の清算手続きの進行に伴うデザイン権の消滅(デザイン)
・法人の清算終結登記日まで移転登録をしていない場合、登記日の翌日に消滅
<特許法改正案における分離出願制度導入の概要>
1.(導入背景)特許可能な出願発明の特許取得機会を拡大して与える
・一部の請求項が特許可能(*)であっても、審判段階で全体請求項のいずれか一つでも棄却(拒絶維持)されると、全体の請求項(発明)が特許拒絶
*拒絶査定件のうち、一部の請求項のみを拒絶した割合(5年平均):9.1%(4,407件/4万8,232件)
・出願人は、このような限界を克服するために拒絶査定不服審判を請求する際に、相当な件数(*)を審判請求とは別に分割出願として追加で提出
*拒絶不服審判の請求(3,821件/年、2016~2020年)時の分割出願(1,561件/年、2016~2020年)の活用率:40.8%
⇒審判と同時に分割出願が乱用されることを防止し、審判段階の後でも出願人に権利を獲得できる機会を与えられる
2.(分離出願導入の概要)分割対象、期間および制限事項(原出願、派生出願の要件)などで分割出願と違いがあり、分離出願の用語‧条文を新たに導入
・(時期)分割:審査進行中、分離:審判終結後、法院に訴えを提起をする前まで可能
・(範囲)分割:原出願の全範囲以内、分離:拒絶査定されていない請求項
・(制限)請求範囲の猶予、外国語出願の不許および新たな分割・分離・変更に派生禁止
<分割出願と分離出願の比較>
<主要国における分離出願関連制度の運営現況>
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