数値限定発明の進歩性判断についての判例紹介

数値限定発明の進歩性判断についての判例紹介 [大法院 2018.7.21 宣告 2016フ380 判決の検討] 1. 序論 数値限定発明の進歩性判断に関する従来の大法院の判例は、「特許発明に進歩性を認めることができる他の構成要素が付加されており、その特許発明における数値限定が補充的な事項に過ぎなかったり、数値限定を除いた両発明の構成が同一であったりしても、その数値限定が公知の発明とは異なる課題を達成するための技術手段としての意義を有し、かつその効果も異質である場合は、数値限定の臨界的意義がないことをもって特許発明の進歩性を否定することはできない」と判示し(大法院2010.8.19宣告2008フ4998判決などを参照)、臨界的な意義がなくとも進歩性が認められる道が開けた。しかし、判例とは異なり実際の審査段階及び法院の判例事例で数値限定発明について進歩性が認められるのは非常に稀である。最近の大法院の判例もまた、数値限定発明の進歩性を否定する趣旨の判決をしているが、具体的な事案を検討してみたい。 2. 法院の判断 2-1. この事件の出願発明(出願番号:第10-2011-7025884号/名称:光学材料用樹脂の製造方法) 【請求項1】 ポリティオール化合物中に減圧下で窒素を流通させることによって、またはポリティオール化合物の蒸留によって、ポリティオール化合物中の水分の含有量を20~600pmに低減する工程(1)、 工程(1)で得られた水分の含有量が20~600pmであるポリティオール化合物を、ポリイソ(ティオ)シアネート化合物と混合し、水分の含有量が10~300ppmの重合成造成物を得る工程(2)、および 工程(2)で得た水分の含有量が10~300pmの重合成造成物を重合することによって光学材料用樹脂を得る工程(3)を含む光学材料用樹脂の製造方法。

2-2. 比較対象発明 比較対象発明は2006年6月22日に公開された日本公開特許公報 特開2006-162926号に掲載されたプラスチックレンズの製造方法及びプラスチックレンズに関するものである。 2-3. 具体的な事案の判断 2-3-1. 出願前に公知発明が有する構成要素の範囲を数値で限定した特許発明は、その課題及び効果が公知発明の延長線上にあり、数値限定の有無にのみ差があり、この限定された数値範囲の内外で顕著な効果の差が生じなければ、その技術分野で通常の知識を有する者(以下、「通常の技術者」とする)が通常、反復的な実験を通じて適切に選択できる程度の単純な数値限定に過ぎず、進歩性が否定される(大法院2007.11.16.宣告 2007フ1299の判決などを参照)。 2-3-2. 本件の第1項の発明と比較対象発明は光学材料用樹脂の原料でありポリチオール化合物をポリイソシアネート化合物と混合し重合成造成物を得て、これを重合する光学材料用樹脂の製造方法という点で同一である。ただ、この事件の第1項の発明は、ポリチオール化合物とポリイソシアネート化合物を混合した「重合成造成物」の水分含有量を「10~300pm」に数値限定しているが、比較対象発明の対応構成は「重合成造成物」の水分含有量に関して明示的に限定しておらず、重合成造成物を混合した時の雰囲気の水分含有量に対し「5g/㎥」以下に限定している。また、この事件の第1項の発明は減圧下で窒素の流通や蒸留を通じて「ポリチオール化合物」の水分含有量を20~600pmに低減する工程を含んでいるが、比較対象発明にはこれに対応する工程が明示的に記載されていない。 2-3-3. 本件の出願発明の明細書を見ても、本件の第1項で明らかにした「重合成造成物」や「ポリチオール化合物」の水分含有量が、その数値範囲の内外でレンズの脈理や白濁の発生抑制と関連して顕著な効果を有すると認められるだけの基材がない。 2-3-4. 水分に敏感に反応するイソシアネートを含む化合物を製造する際、イソシアネートと水分の副反応を抑制するために水分が除去された反応物、溶媒及び充填剤などを使って、反応物から水分を除去するために減圧下で窒素を流通したり蒸留する方法を用いるのは、本件の出願発明の出願前から広く実施されていた技術であるため、本件の第1項の発明から「窒素の流通やポリティオール化合物の水分含有量を20~600pmに低減する工程」は通常の技術者が比較対象発明に周知慣用技術を適用して容易に想到することができる。 2-3-5. 本件の第1項の発明で重合成造成物の水分含有量の数値を調整し達成しようとするレンズの脈理や白濁の発生抑制効果は比較対象発明に同一の内容が記載されていたり、比較対象発明の技術的思想に内在されていた効果を確認したに過ぎない。 3. 論議及び示唆点 数値限定発明の進歩性の判断に関する多数の判例にみるように、対象判決にも数値限定発明の進歩性について「限定された数値範囲の内外で異質的であったり、顕著な作用効果の差が生じるかどうか」(大法院2007.11.16.宣告2007フ1299判決)を判断基準に提示しており、明細書内に顕著な効果を認める記載がなく、比較対象発明の技術思想に内在されていた効果を確認したのに過ぎないということを根拠に進歩性を否定している。 このように、数値限定発明は先行発明について単純な設計変更事項に過ぎないと判断され、進歩性が欠如していると指摘される可能性が大きいため、出願段階からこれに対する徹底した準備が必要と思われる。具体的に先行発明と効果が同質である数値限定発明によって進歩性を認めてもらうためには、出願段階で明細書内に数値定についての技術的な意義を使いながら、限定地を境界とする作用効果及びこれを裏付けするデータを忠実に記載しなければならないだろう。

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