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特許請求の範囲の前提部に記載された構成要素を公知技術として

特許請求の範囲の前提部に記載された構成要素を公知技術として 認めるか否かについての判例紹介

1. 序論

韓国大法院は、出願人が特許請求の範囲の前提部に記載した構成要素や明細書に従来技術として記載した事項を出願前に公知されたものと見るという従来の判決を変更する全員合議体の判決を下しました。 上記判決の事案を検討してみると、本件の登録考案の出願人が審査過程において審査官から進歩性が否定されるという趣旨で拒絶理由通知を受け、一部の構成を請求項の前提部の形式で補正を行いながら前提部の形式で記載された構成を公知のものとして認めるという趣旨が込められた意見書を提出したため、審査官は、本件の登録考案の前提部に記載された構成が公知技術に該当すると事実上推定しました。 しかし、出願人は、意見書にて前提部の構成を公知として認めましたが、実際に確認した結果、前提部の構成が、本件の登録考案の出願時に公知となったものと誤解したもので、審査官の推定を覆すべきだと主張しました。 出願人が意見書にて前提部の構成要素が公知となったと誤解したことを認めたとしても、審査過程及び無効審判で公知技術として事実上推定するかについては、これまでも熱い争点となっていました。最近、大法院は、大法官全員の合議下で、長い間続いていた争点について最終的な意見をまとめて注目すべき判決を宣告しました。

2. 大法院の判決

韓国大法院は、前述の事項に関して、「特許請求の範囲における前提部の記載は、作成の目的や内容が様々であるため、ある構成要素が前提部に記載されたという事情のみで公知性を認める根拠にはならない。また、前提部に記載された構成要素が明細書に背景技術又は従来技術として記載されることもあるが、出願人が明細書に記載する背景技術又は従来技術は、出願発明の技術的意義を理解するのに役立ち、先行技術調査及び審査に有用な従来の技術ではあるが、出願前に公知となったことを要件とする概念ではない。従って、明細書に背景技術又は従来技術として記載されていたとして、それ自体で公知技術として見ることもできない。 その場合、明細書の全体的な記載と出願経過を総合的に考慮して、出願人が一定の構成要素を単に背景技術又は従来技術である程度を超えて、公知技術であるという趣旨で特許請求の範囲の前提部に記載したことが認められる場合にのみ、別途の証拠なしでも前提部に記載された構成要素を出願前に公知となったものであると事実上推定することが妥当である。しかし、このような推定が絶対的なものではないため、実際には出願人が、出願当時、まだ公開されていない先出願発明や出願人の会社内部でのみ知られていた技術を誤解して公知となったものと誤って記載したことが明らかになった場合のような特別な事情があるときには、推定が覆される余地はある」と、最終的に判断しました(2013フ37;2017.1.19宣告)。

3. 論議及び示唆点 本判決は、構成要素が前提部に記載された場合、或いは、背景技術又は従来技術として記載されていた場合に、それ自体で公知技術として見ることはできず、明細書の全体的な記載と出願経過を総合的に考慮すると、出願人が背景技術又は特許請求の範囲の前提部の構成が公知技術という趣旨で記載したことが認められる場合にのみ、別途の証拠なしに、これを出願前に公知となったものと事実上推定することができるという趣旨です。ただし、出願人が誤解により、誤って認めたという特別な事情を主張立証すれば、本判決は、上記推定に基づいた拒絶理由が解消されたものとみなければならないと判明しています。 しかし、本判決は、請求項の前提部として記載された構成要素が審査過程にて公知技術として認められるか否かについての判断に制限され、出願経過において現れた出願人の意識的な除外に基づいて均等侵害の認定範囲を制限する特許侵害のケースに適用するのには限界があると思われます。 

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