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特許侵害訴訟継続中の権利範囲確認審判の請求利益について(大法院2018.2.8宣告2016フ328判決)

(1) 序論  特許権侵害について係属中の民事訴訟で特許権の効力の及ぶ範囲が確定できる場合、上記の民事訴訟とは別に請求された権利範囲確認審判の審判請求の利益が否定されるかどうかが問題となる。

(2) 事件の概要  原告ら(被上告人)は被告(上告人)を相手どって被告が実施する確認対象発明が原告らのこの事件の特許発明を侵害するという理由で特許権侵害禁止などを求める訴(以下、「特許侵害訴訟」とする)を提起し、被告は特許侵害訴訟の弁論が終結し判決が宣告される前に消極的権利範囲確認審判を請求した。  特許侵害訴訟の一審判決は、被告の製品はこの事件特許の均等侵害に該当すると判断し、損害賠償も命じた。これに対し、特許審判院の権利範囲確認審判審決は、確認対象発明はこの事件特許の均等侵害に該当しないと判断した。  特許侵害訴訟の控訴審判決は、特許審判院の審決と同様の趣旨で被告製品はこの事件特許の均等侵害ではないと見て一審判決を取り消した。  しかし、権利範囲確認審判審決取消訴訟で、特許法院判決は関連特許侵害訴訟が係属中であるため、その訴訟で、この事件特許発明の権利範囲を確定できるにもかかわらず、別途にこの事件の消極権利範囲確認審判を請求するのは訴訟経済に照らして有効・適切な手段であるといえず、当事者に過度の不必要な負担を与える場合に該当するため、この事件は、審判請求の利益を認めることは困難であるとして審決を取り消した。

(3) 大法院の判断  特許法院事件の上告審で、大法院判決は次のような理由を挙げて特許法院の原審判決を破棄差し戻した(大法院2018.2.8.宣告2016フ328判決)。 ①権利範囲確認審判は簡易かつ迅速に確認対象発明が特許権の客観的な効力範囲に含まれるかを判断することにより、当事者間の紛争を事前に防止したり、早急に終結させることに貢献するという点で独自の機能を有する。 ②特許法第164条第1項は、審判長が訴訟手続が完結するまで審判手続を中止することができると規定し、第2項は、法院は、特許に関する審決が確定するまで訴訟手続を中止することができると規定し、第3項は、法院は、侵害訴訟が提起され終了した場合は、その旨を特許審判院長に通知するように規定し、第4項は、特許審判院長は、第3項の規定による特許権又は専用実施権の侵害にに関する訴に対応して、その特許権についての無効審判などが請求された場合、その旨を第3項に該当する法院に通知することになっている。このように特許法が権利範囲確認審判と訴訟手続を各手続の開始前後や進行経過などとは無関係に別途の独立した手順で認められることを前提に規定していることも、前述した本権利範囲確認審判制度の機能を尊重する趣旨として理解することができる。 ③このような権利範囲確認審判制度の性質と機能、特許法の規定内容と趣旨等に照らしてみると、侵害訴訟が係属中であるその訴訟で特許権の効力の及ぶ範囲を確定することができたとしても、これを理由に侵害訴訟とは別に請求された権利範囲確認審判の審判請求の利益が否定されると見ることはできない。

(4) 判決の意義  権利範囲確認審判の審決取消訴訟における特許法院の判決は、特許権の侵害訴訟の控訴審の管轄が特許法院に集中することで、特許法院で特許侵害訴訟の控訴審と権利範囲確認審判の審決取消訴訟が同時に係属している場合、実質的に同じ争点について2件の別途判断する必要性に疑問を持った特許法院首席裁判部が、特許侵害訴訟が係属している場合に限り、権利範囲確認審判を別途請求する審判請求の利益がないと見て判決を下したと考えられる。  しかし、上記の特許法院判決は特許侵害訴訟が係属している場合、権利範囲確認審判を請求できないようにすることで意図とは無関係に当事者に深刻な権益侵害の問題を引き起こした。権利範囲確認審判制度の変更は、特許法の改正を通じて行われるべきであるにもかかわらず判決を通じて法解釈論によって行おうとしたものである。  これに対し、大法院は権利範囲確認審判制度の性質と機能、特許法の規定内容と趣旨等に照らし合わせ、侵害訴訟が係属中であるためにその訴訟で特許権の効力が及ぶ範囲を確定することができるとしても、侵害訴訟とは別途に請求された権利範囲確認審判の審判請求の利益が否定されないとした。  つまり、同判決は、大法院が特許法上の特許侵害訴訟とは無関係な権利範囲確認審判の独自の機能を認め、特許侵害訴訟継続中の権利範囲確認審判の請求利益を認めていることを確認したことに意義がある。

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