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商標の変形使用で登録商標の「使用」が認められず登録が取り消された判例の紹介

商標の変形使用で登録商標の「使用」が認められず登録が取り消された判例の紹介

1. はじめに

韓国商標法は商標の使用を促すため、特許庁に登録された商標であっても、3年以上使用していない場合、誰でも登録取消審判を請求することができるよう規定している(商標法第119条第1項第3号)。審判が請求された後、商標権者がその使用を証明できなければその商標の登録は取り消される。

特許審判院によると、2013年1,676件、2014年1,449件だった登録商標に対する取消審判請求が着実に増加し、2016年2,122件、2017年には2,124件に達し、特許審判院は審決を経て2016年には1,207件、2017年には2,172件の商標に対する登録を取り消した。

[年度別商標不使用取消審判請求の現況(2013〜2017)]

[年度別商標不使用取消審判処理の現況(2013〜2017)]

不使用取消審判に関連し、商標権者が商標を使用しているにもかかわらずこれを過度に変形して使用する場合、「登録商標の使用」として認められず権利が取り消されることがある。下記の判例は、商標が使用されたにもかかわらず登録商標と使用商標との間の同一性が認められなかったため、取り消された審決である。このような判例を参考に商標権者は登録商標の使用態様に留意せねばならず、できる限り商標が登録されたそのままの状態で使用することが好ましい。

2. 裁判所の判断(特許法院確定判決または最高裁上告棄却後、特許法院差し戻し判決)

2-1. 特許法院2015.1.13.宣告2015ホ3061判決(最高裁上告棄却後、特許法院差し戻し判決)

裁判所は、「商標権者が製作・納品した下着製品に実際に表示されていた商標は “

” などであり、本件登録商標である “

” と比べると字体や絵柄の形などで違いがあり、右側下の “CooLMaX Wear” 部分が省略されている。ところが上記 “CooLMaX Wear” 部分が本件登録商標の指定商品との関係で識別力がない部分であると断定することはできない上、原告はこの部分が欠落している形態の商標についても多数出願及び登録を受けたことがある点などを考慮すると、上記の下着製品に実際に表示されていた標章が本件登録商標と同一性が認められると見るのも難しい。」と判示しつつ、上記の実使用商標の使用を登録商標の使用として認めなかった。

2-2. 特許法院2015.9.24.宣告2015ホ79判決(確定判決)

裁判所は、「本件登録商標 “

” は英字と図形を組み合わせた商標として両方の部分が独自的な要所として機能をするというものであるが、原告が実際に使用したと主張する商標 “

”は英語でのみ表示されていて図形の部分が使用されておらず、両商標は類似商標に過ぎず、同一性がある商標と見るのは難しい。」と判示しつつ、上記の実使用商標の使用を登録商標の使用として認めなかった。

2-3. 特許法院2017.6.2.宣告2016ホ6999判決(最高裁上告棄却後、特許法院差し戻し判決)

裁判所は、「本件登録商標 “

” と実使用商標 “

” の外観を比較してみると、実使用商標の場合、本件登録商標の図形部分のうち特徴的な構成といえる、帽子をかぶったまま歩いていく男の進行方向が逆であり、円の縁の部分も省略されているという点においては差異が見られるため、取引通念上同一性が認められる標章と見ることができない。」と判示しつつ、上記の実使用商標の使用を商標の使用として認めなかった。

3. 議論および示唆点

原則として商標制度は、商標の使用に関する独占権を付与することにより、商標権者の利益と商品選択に関する消費者の信頼を同時に保護することを目的とする制度であり、公益的性格と私益的性格の両方を備えている。したがって、商標登録後3年以上使用しない場合、誰でも取消審判を請求することができるように規定しているものであり、商標は登録を受けることと同様にその登録を維持することも重要である。特に商標は、特許/実用新案/デザインのように登録期間が別途定められておらず、登録後10年ごとに更新すれば永久的にその権利を独占することができるからである。

したがって、商標権者は商標を登録後に継続的に3年以上使用を開始することができなかったならば、このことにより、再出願を検討することができる。また、使用を開始したとしても上記の判例のように登録商標と同一性が認められない変形使用によって商標登録が取り消されるに至ることがないよう、その使用の態様に留意しなければならない。

商標権者はできる限り登録商標が登録されたそのままの状態で使用することが好ましく、これを変形して使用する必要がある場合にも、基本的に登録商標を使用しながらこれと同時に変形された商標についても併用する案を考慮することができる。さらに、変形商標について別途に商標登録を確保するのも良い代案となるであろう。

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