企業の80%、「特許訴訟における強力な証拠確保制度が必要」
企業が特許侵害訴訟における証拠確保に多くの困難を経験しており、より強力な証拠確保制度を求めていることが分かった。
特許庁は2020年1月、企業、弁護士、弁理士などを対象としたここ5年間の特許侵害訴訟のための証拠収集確保手続き利用経験と制度改善策についての意見を調査*した。
* (調査期間) 2020.1.6.~.1.31.、(対象) 企業160社、弁護士38名、弁理士24名が回答(訴訟経験、訴訟代理または支援経験のある企業50社、弁護士20名、弁理士17名)、(調査タイトル)特許侵害訴訟における証拠収集実態調査
その結果、企業の88%は特許侵害訴訟を提起するための証拠収集が困難であると回答*した。最大の理由は、侵害行為が相手方の工場など被害者が確認し難い場所で行われているため、把握できないということであった。その他の理由としては、侵害物品の具体的な分析、損害額に関する証拠確保、営業秘密による証拠収集の難しさを挙げた。
* 企業88%(50社中44社)、弁護士100%(20名中20名)、弁理士94%(17名中16名)が回答
また、訴訟を提起した後の裁判過程においても証拠の確保が難しいため、企業の80%*は現行制度よりも強化された証拠確保手続きが必要であると回答し、弁護士の90%以上が制度強化の必要性に同調した。
* 企業80%(50社中40社)、弁護士90%(20名中18名)が回答
具体的な改善策としては、現行制度をより実効性伴う制度に改善することが最も重要(企業、弁護士いずれも100%)と回答した。新たな制度の導入案について企業は、第三者の専門家による証拠調査制度の導入(43%)が最も必要だと答えた一方、弁護士は、訴訟における資料および資料リスト交換制度の導入(67%)をより求めていることが明らかになった。
特許訴訟において営業秘密に当たる証拠をどこまで閲覧できるようにすべきかについての質問*に対して、企業は「法院と法院が指定する専門家」までに限り、閲覧を許可すべきとの意見が多い反面、弁護士は「相手方代理人」も閲覧範囲に含めるべきという意見が多数であった。
* 現行特許法132条によると、法院が営業秘密の閲覧可能な範囲または閲覧可能な者を指定できる
一方、企業の過半数が現行の民事訴訟法および特許法の証拠確保制度*をよく理解していないと回答し、特許侵害の事実を立証して損害賠償を受けるための証拠確保制度に対する認知度と利用率が低いことが分かった。
* 文書目録提出命令、資料提出命令、具体的行為態様の提示義務、秘密保持命令など
特許庁産業財産保護政策課長は「故意的特許侵害に対する3倍賠償制度が導入され、侵害事実と損害額立証の重要性がより高まる」とし、「今回の調査結果に基づいて、低コストかつ高効率の証拠確保策を講じるために各界の意見を取りまとめる」と述べた。
[出所: 特許庁]