損害賠償額現実化に向けた特許法一部改正案が国会通過
- 損害額算定方式を改善し、3倍賠償制度の効果が最大となる見通し –
特許庁は、特許権者の生産能力を超える特許侵害者の製品販売に対しても損害賠償するよう定めた特許法一部改正案が、5月20日(水)、国会本会議を通過し、今年12月から施行される予定であることを明らかにした。
現行特許法では、特許権者の製品生産能力が100個である場合、侵害者が10,000個の侵害製品を市場に販売しても、特許権者は、本人の生産能力(100個)を超える9,900個の製品については、相応な損害賠償を受けられなかった。
不動産とは異なり、知的財産権は、権利者自ら特許製品を生産しながら第三者にも特許を使用させ、実施料を受け取れる特性がある。しかし、現行特許法は、このような知的財産権の特徴を適切に反映できておらず、こういった問題は中小•ベンチャー企業を中心に継続的に提起されてきた。
改正法が施行されれば、特許権者は、これまで損害賠償の対象ではなかった残りの9,900個についても、特許発明の実施に応じた実施料を侵害者から追加で賠償を受けられる。
今回の特許法一部改正法律は、当初は侵害者の利益全体を特許権者の損害として認めることを主な骨子として発議されたが、国会での議論の過程において、企業、法院行政処との十分な協議を経て、特許権者の生産能力範囲内の販売数量については現行通りとし、超過販売数量は、特許発明の合理的な実施料で算定し、これを足し合わせるものとした。
** (現行)特許権者の生産能力の範囲×単位数量当たりの利益額
** (改正)(特許権者の生産能力の範囲×単位数量当たりの利益額)+(超過分×合理的実施料率)
米国は、上記の算定方式を既に1940年代から判例で認めており、日本も特許法を改正し、今年4月からこれを認めている。今回の改正内容のように損害額を算定して特許侵害に対する3倍賠償を並行して運営する国は、米国に次いで韓国が2番目である。特に、全世界の知的財産をリードする先進5カ国(韓国、米国、欧州、中国、日本)の特許法に今回改正された損害額の算定方式と3倍賠償を併せて明文化した国は、韓国が唯一である。
注目すべき点は、損害額の範囲を拡大する今回の制度改善と、昨年7月から施行している特許権侵害に対する3倍賠償制度とが組み合わされることである。改正によって損害賠償額が現実化されれば、3倍賠償額も自然と増額されるものと考えられる。これにより、これまで特許権保護の限界により障害となっていた特許技術取引および知的財産金融の活性化を促進する効果も期待される。
一方、特許庁は、訴訟過程で侵害者に偏在している侵害および損害額立証資料を特許権者がより簡単に確保できる「K-ディスカバリー制度」の導入も進めている。
特許庁長は「今回の改正法が第20代国会最後の本会議を通過したことで、損害賠償体系の基礎固めが完了したという点で意味があり、全世界における最も強力な特許権保護システムを整えたことが最大のポイントである」とし、「本改正で、ようやく韓国も知的財産を適正取引できる公正な文化が定着するものと期待し、今回の制度改善が、スタートアップおよび中小•ベンチャー企業が着実に成長をしていくための礎となることを望む」と述べた。
[出所: 特許庁]